FN79号
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no. 79 Dec. 20138  ムササビやリスなど身近な野生哺乳類は、子どもたちばかりでなく大人にも大きな関心を呼び起こすようです。ムササビの観察会を開催すると、数秒ほどの短い滑空にも大きな歓声があがります。 しかし一般に、野生哺乳類は警戒心が強いため、遭遇する以外に出会う機会はほとんどありません。そこで、まずは食しょっこん痕や糞、足跡など生活の痕跡を手がかりに彼らの世界に接近していくことになります。 こうした生活の痕跡には、動物についての大切な情報が残されています。たとえば、どんな動物も効果的に食物を食べる技をもっています。食事は、もっとも無防備になりやすく、捕食者に襲われやすい瞬間です。なるべく効果的に食べること、そしてもっとも安心できる空間で食事をすることが大切になります。 つまり食痕には、その動物の洗練された食事の技だけでなく、どのような場所が安心できるのかといった情報が残されているのです。それが読み取れれば、どこでその動物に出会えるか見当がついてきます。 私たちのフィールド・ミュージアムでは、ふだんは出会うことが難しい動物たちに親しみ、相手の暮らしになるべく干渉しないで出会いを楽しむにはどうしたらよいかを、ムササビやニホンリス、野ネズミ類、モグラ類など都留の身近な哺乳類の生態をもとに工夫してきました。 私たちの身近にいるコウモリは空中、ムササビやリスは樹上、野ネズミ類は地上、モグラは地中、というように、世界の哺乳類が進出した空間をほぼ網羅しながら暮らしていることになります。 身近なこうした哺乳類との出会いは、世界の哺乳類の基本的な行動や生態を理解することにもつながるのです。H・D・ソローが『ウォールデン 森の生活』(今泉吉晴訳、小学館)で示唆した散歩のほんとうの意味とは何か。散歩をとおして見えてくるものとは。私たちは歩くことで、変貌する自然やまちの今を記録し、フィールド・ミュージアムのたのしみを報告していきます。第22回身近な野生動物の世界に 近づくには私たちが暮らすまちのそばでも、さまざまな野生動物に出会うことができる

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