80(単ぺージ)
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no. 80 Mar. 201410メニューの書かれた黄色い紙が窓いっぱいに貼られているおばちゃんとの出会い 私たちが入ったお店は「たこ焼き屋ひらい」。扉を開けるとまず4人がけのテーブル席が目に入る。左側を見ると、大きな調理スペースがあり、そこには屋台でよく目にする鉄板やたこ焼き機が置いてある。その手前は、カウンター席になっていて、数人分の椅子が並んでいる。 エプロンをしたおばちゃんが「いらっしゃい」とはきはきした声でいう。私たちはカウンター席に座り、注文したお好み焼きを待っていた。すると、常連らしきお客さんが店内に入ってきて、おばちゃんと体調や近所のことを話し始めた。しばらくすると、頼んでいたお好み焼きが出来上がり、おばちゃんがこちらに持って来る。そのときに「文大生?」と話しかけてくれて、大学生活について話をした。それから、私の地元のことやこのお店のことなど、気づいたら話が弾んでいた。  私は飲食店でご飯を食べたときの帰り道にたいてい「おなかいっぱい」、「おいしかったな。また行きたいな」というふうに思う。だけど、「たこ焼き屋ひらい」から帰るときには「またおばちゃんと話がしたいな。もっと話が聞きたいな」と思っていた。このことがすごく印象的だったけれど、それがなぜだったのかそのときはわからなかった。再び「たこ焼き屋ひらい」へ お店を出るころには、まるで以前から知り合いだったかのように、私とおばちゃんは親しくなっていた。人見知りな私は初対面の人、ましてやお店の人と打ち解けることはあまりなかった。だから、おばちゃんのような人に出会えたことは新鮮だった。 おばちゃんが楽しいと感じるのはいつだろう。おばちゃんがお客さんと過ごす時間を楽しく感じていて、それがお客さんにも楽しいと感じさせているのではないか。もっと詳しく話せば、なぜ惹かれたのかということも、わかるのかもしれない。そう思い、再び「たこ焼き屋ひらい」へと足を運ぶことにした。 「たこ焼き屋ひらい」を経営しているのは伊いとう藤千ちよこ代子さん。私をはじめ、多くのお客さんから「おばちゃん」と呼ばれ、親しまれている。 「たこ焼き屋ひらい」は、おばちゃんのお昼食を食べに友達と出かける。しかし、時刻は14時になっており、飲食店は準備中の看板ばかり。谷村町駅前に来てやっとのことで営業しているお店を見つけた。ここでお昼を食べようと、お店に入ることにした。廣瀬はづ紀(社会学科2年)=文・写真話をにしくお店行

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