80(単ぺージ)
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no. 80 Mar. 20148りもしていたという。レストランをやめてからも教室とパンの配達は3年ほど続けていたが、配達に手が回らなくなったためパン屋としてお店を構えることにしたそうだ。パン屋としての「Baleine」しか知らなかったわたしは、そんな経緯があったことに驚いた。 お店はレストランとして営業していた場所をそのまま使っていて、内装もほとんど変えていないそうだ。そう聞いてから改めて店内を見ると、お店の奥にある木製のカウンターは高めでパン屋よりもレストランで使われそうなものだと気づいた。店名の「Baleine」はフランス語でクジラという意味。クジラのようにゆったりとした時間を過ごしてほしい、と旦那さんがつけた名前をレストラン時代から引き継いでいるそうだ。 わたしは「Baleine」に来ると、つい長居をしてしまう。何を買うか決めるにも時間をかけてみたり、武井さんやほかの店員さんと世間話をしたり。そうして「Baleine」で過ごす時間が好きで、何度も足を運びたくなる。たしかにここに来た時はゆったりと時間を過ごせていたな、と店名の由来を聞いて思い返した。週2日営業の謎 現在「Baleine」が営業しているのは毎週火曜日と金曜日。開店時間も閉店時間もはっきりと決まっていない。武井さんがいるとお店は営業中ということになり、パンが売り切れてしまえばその日の営業は終了だ。お客さんが買いにくる時間に合わせて融通が利くようにやっている、と武井さんはおっしゃっていた。 営業日はだいたい朝の3時半くらいから開店の準備を始めるという。パン屋は朝早くから働いているイメージがあったけれど、数字にして教えてもらうと仕事の大変さがよくわかる。パン生地をこねたり焼いたりして、最初に焼いたパンが完成するのは朝の7時くらい。9時ごろにはほぼすべてのパンが焼きあがるそうだ。 しかし、それだけ早い時間から準備をしても、当日だけでできることには限界があるという。「Baleine」で売られるパンの多くに使われる天然酵母は、発酵させるのに2、3日はかかってしまうそうだ。どうして週に2日しか営業しないのか、お店の存在を知ったときから不思議に思っていたけれど、営業していない日は武井さんが美味しいパンを作るための準備期間だったのだ。武井雅子さんという人 「作るのが好きだから。やっぱりなんでも作ってみたくなるんですよね」と武井さんはおっしゃった。聞くと「Baleine」で出しているものは基本的に武井さんが作っているのだという。パンと一緒にお店で売られているジャムも、サンドに使われるマヨネーズも武井さんの手作りなのだそう。美味しいものを追究するだけなら、買ってしまえば済むことだと思っていた。それをわざわざ作ってしまうなんて、好きでなければできないことのように思う。 思い返すと、わたしが昨年の秋に売られていた栗のパイが美味しかったと感想をお伝えしたたときには、あれは栗がたくさん手に入ったから作ったんだけど、と武井さんは嬉しそうに説明をしてくださった。食べものにかかわる話をしているときの武井さんは声のトーンが少し高くなり、とても楽しそうだ。聞いているわたしまで楽しくなり、もっ

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