学報136号
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さよなら「文大」 専任講師として1982年に本学に着任してから35年を迎えます。ずいぶん長くいたという感想と、あっという間に日々が過ぎ去ったという感じがambivalentに錯綜しています。着任の年は、5年に1度開かれる国際言語学者会議が8月東京で開かれた年で、一般部門とワークショップなど3つの口頭発表をしました。また、6月には、上智大学で日本言語学会大会でも口頭発表をするなど本学に着任して慣れないなか研究も多忙の年でした。 そのような多忙な中、3、4年生の有志から前年に出版されたばかりのチョムスキーの著書Lectures on Government and Binding (Foris Publications) を読む会を依頼され、夏休みが始まったばかりの1週間やりました。その時参加した学生2人がのちに筑波大学大学院へ進学し、現在岩手大学でそれぞれ教授と准教授になっています。 このことがきっかけになり、私は、大学の教員養成をしようと思いました。本学は、教員養成で有名ですが、大学の教員養成も大事なことであると思ったからです。それ以来現在まで7人の教え子が国立大学に3人、県立大学に1人、私立大学に2人、研究、教育に従事し、また、アメリカ、シカゴにあるノースウエスタン大学癌センターで「トリプルネガティヴ乳癌」の研究に従事しているものが1人います。近い将来多くの女性を救う研究になると期待しています。また、現在大学院に在学中、今年4月から大学院へ進むものもいます。最後の私のゼミ生です。そして、すでに何人か「孫弟子」もできて嬉しく思っています。 私の専門の理論言語学は、この35年間に大きく変遷していき、2000年以来、生物言語学という生物学を基盤にする言語研究という超学際的分野へ進化し、発展して今に至っています。当初の生成言語学は、普遍文法の中の規則・原理と諸言語構造を統一的に扱える理論でしたが、現在は、生物学特に遺伝子学の研究の進歩、脳科学の研究の進歩から生物学を基盤に置く研究、例えば、ヒト言語の起源と進化の研究、幼児の脳内で言語能力がどのように個別の言語を獲得していくのかという研究があります。脳の活動がfMRIなどからよくわかるようになり、今後の発展が期待されています。 私の在職期間中に、本学も2号館、3号館、新図書館、国際教育学科棟もでき成長して来ました。さらに30年には、教養学部も増設され、31年度県合同庁舎跡も本学に移管され、新しい研究棟ができるようです。本学は、これからも発展し続けることを願っています。 この間、世界はdiversity(多様性)を認める方向へ進んで来ました。様々な違いを認め合うことの重要さを若い人たちに教えていかなければいけないと思います。私は、本学を去ります。今おられる方々に様々な「多様性」を学生にご指導していただきたく思います。研究者養成を目指して英文学科 教授 今 井   隆4年ゼミ生と共に4都留文科大学報 第136号

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