学報136号
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さよなら「文大」 社会学科が「環境・コミュニティ創造(環コミ)」と「現代社会(現社)」の2つの専攻になる1年前の2006年に、私は環コミの環境社会学ゼミ担当の教員として着任しました。 「環コミ」専攻の目標は、地域社会とその根幹にある環境の継承や利用、創造について、地に足をつけて考え、実際に行動する人を育てることにありました。そのため、文献・ネットだけでなく社会や環境の現場から学ぶこと、そして色々な立場の人と協働する作法を身につけることを重視しました。 「フィールド体験」「プロジェクト研究」「ワークショップ」「フィールドワーク」「フィールド・インターンシップ」等々の特徴的な科目を含むユニークなカリキュラムを、試行錯誤しながら運営した11年でした。 他のどこにもない、環コミ独自の新しい科目を開講するにあたっては、既存のシラバスを下敷きにすることもできません。特に専攻開始初期のころは、文字通り「走りながら考える」状態で、プログラムをつくり、実施しました。スタッフで知恵やスキルを出し合うだけでなく、学生の皆さんの反応から多くを教えられました。その意味では、新しい専攻をつくっていく過程で、教員と学生が共に学ぶことが出来たのだと思います。 環コミの学びは、「ガバナンス」、つまり全国一律の指示に従うのではなく、地域で暮らす人々が自分たちで考え、実践することが求められている今の時代に、必ず役立つものになったと思います。私自身も、環コミにかかわった12年間で、本当に得難い体験をさせていただき、感謝しております。 赴任した当初、私はもっぱら「環境問題をめぐる人間の行動」に関心があり、自然環境からは縁遠い人間でした。「自然が好き」といってもそれはほぼ、暖房の効いた快適で安全で清潔な部屋の中からガラス越しにみる「自然」が好き、という意味でした。  文大に勤めるようになってしばらく経ってから、「ガラス越し」ではない自然についても、体験的に知るようになりました。「寒いし、事故の危険があるし、野生動物もいる。人間は本当に、なんて無力なんだろう!」というふうに。 しかし、そういう時ほど、「生きている」と実感すること、どうしようもない自然の力や厳しさ美しさを実感することはありません。人間と自然のつき合い方についての自分の考えも、変わってきた気がしています。 ガラス越しでない自然に触れるようになったきっかけの一つは、やはりこの地域の自然です。研究室から毎日眺め、折々、歩いたりランニングしたり、お弁当を食べながら過ごしたりした楽山の四季の素晴らしさは、忘れることはないでしょう。環コミでやったこと、楽山で学んだこと社会学科環境・コミュニティ創造専攻 教授 平 林 祐 子よく歩いたキャンパス横の楽山公園。桜も紫陽花も、本当に素晴らしい。6都留文科大学報 第136号

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