学報136号
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 皆さんご卒業おめでとうございます。僕は神秘的で明るい話が好きなので僕の「おくることば」はそれにします。「袖振り〈擦り〉合うも多生の縁」という言葉がありますね。「多生」は仏教語で何度も生まれ変わることで「他生の縁」とも書きますが「多少の縁」ではありません。無理に信じる必要はありませんが、僕たちはこれまで何十回何百回と生まれ変わりを繰り返してきたんですって。これからも。前世・過去生の存在は、世界の権威ある精神科医による退行催眠療法(いまや前世療法の第一人者であるアメリカの精神科医ワイス博士[1944-]は、実は30歳代後半までは輪廻転生に懐疑的な唯物論者でした)の過程で図らずも明らかになってしまった科学的な事実です。この学説には、筋金入りの唯物〈唯脳〉論者の科学者であるエリート医師や臨床心理学者によって集められた膨大な証拠(何万件にも及ぶ被験者[唯物論者もいる]の証言事例の検証と症状の改善)がありますので、この事実を否定するのがむしろ難しいということです。僕はこのことを飯田史彦著『生きがいの創造』を読んで知りました。せっかく科学的に実証されたわけですから、この生まれ変わりという概念を宗教的・思想的な観点だけで捉えるのではなく、生きがいある人生を送るための思考・ツールとして活用してみてはどうでしょうか。研究によると、僕たちは偶然にこの宇宙に存在しこの時代この場所に生まれてきたのではなく、魂再生のために過ごす中間生でマスターズと呼ばれる光の指導のもとソウルメイトたちと相談しながら、愛を学び互いに成長するために今こん生じょうでの人生を決めてきたそうです。人生の岐路に立った際の判断はその時の選択に任せるというシナリオを書いてくる人もいるらしいですが、あえて、そう簡単に思い通りにはならない人生を自分で計画してくるのです。でもご安心ください。その人生は甲子園の高校野球のように勝ち抜き制ではなくて、頑張れば挽回できる敗者復活制になっています。いずれにしても人生は自作の問題集なのですから「自分は偶然…した」のではなく、「自分はよほどの理由があって…したのだ、全て計画通りで順調」という思考の人生観のほうが生きがいを持ちやすいといわれています。ですから皆さんは本日「よほどの理由があって」都留文科大学を卒業されました。ソウルメイトというのは、過去生で互いの成長のために何度も関わりのあった人たちです。来世でも。「えー?!またあの人と?!」とショックを受けないでください。性別や見目形、互いの間柄、時にはそのキャラまで変わりますので。もしかしたら皆さんの中の誰かの過去生で、この僕もソウルメイトとして一枚噛んでいるかもしれません。その時は僕が皆さんの生徒(お嬢様キャラ?) だった気がします。今後の長い今こん生じょうにおいて皆さんは「よほどの理由があって」数多くのソウルメイトと貴重な出会いと別れを経験し、「よほどの理由があって」日々の仕事や課題に取り組み、そういったことを通してたくさんの愛を学んでいくことでしょう。 卒業していく人にどう声をかけていいのかがだんだん難しくなってきているととまどっています。何も私が年を取って「卒業、何がめでたい」とかひねてしまったわけではなく、これからの人間の未来というものがあまりに見通し不明なので、心から「世界へ羽ばたくんだね、おめでとう!」とは言えなくなってしまったからです。「未来が不透明なのはいつの世でもそうでしょう」と言われそうですが、この頃はまた格別です。Brexit、トランプ、IS、慰安婦、移民難民、核兵器、挙句の果てに未履修問題などと続けていくと、古い問題の堆積の上に新しい現象が積み重なってきて、私も頭がパンクする気がしますし、学生諸君が大学で4年くらい勉強したって何が何だか分からないな、と嘆くのは当然であるかと思います。勉強したか否かはともかくとして。でも、はばたけないような世界であるなら、羽ばたかずに四つ足で歩くというやり方もあります。「牛になってうんうん押すのです」とたしか漱石か誰かが若者にアドバイスしているのをどこかで読んだ覚えがあります。出典を忘れたわりには私は若いころ読んだこの言葉が気に入っていて、ときどき思い出しては自分を励ましています。私はウシ年生まれでもあるので。もしかしたらすごく含蓄のある言葉かもしれません。卒業生の皆さんも、くじけそうになったらこれをちょっと思い出してみてください。四つ足で押してみる社会学科教授黒崎 剛よほどの理由があって都留文科大学英文学科教授儀部直樹9都留文科大学報 第136号2018年2月28日(水)

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