学報139号
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旅立つことば 卒業式を迎えるまで残りわずかとなった。入学からの4年間の大学生活を振り返ってみると、とても多くのことを学べたと感じる。 「文大の周りって何もないよね」との指摘を学内外の方からよく受ける。しかし、水と自然に恵まれ、多くの動植物に触れられる環境が都留にはある。そうした環境が好きで入学を決意したこともあり、都留の空気は心地よく感じた。かけがえのない体験ができたと思う。 人間との出会いも大きい。全国各地から集結した学生、厳しくも温かいご指導をして頂いた先生方、個性豊かな地域の方々など、その数は枚挙にいとまがない。こうした方々との交流は、私にとって毎日が新しい発見の連続だった。私自身、大学生活の中で思い通りにいかないこと、不甲斐ないと感じることは何度もあった。その壁を乗り越え、成長できたのは他でもない、人間とのつながりであったと思う。心より感謝申し上げると同時に、これからもかけがえのない関係を築いていきたい。 来年度からは教員という職に就き、新たなステージへ足を踏み入れることになる。正直、期待と同じくらい不安な気持ちもある。しかし、幼い頃からの夢を叶えるための一歩を踏み出すことができたのは間違いなくこの4年間の経験があったからだ。これからもお世話になった方々への感謝を忘れず、日々研鑽を積んでいきたい。本当にありがとうございました。 4年次に1年間休学したため、同期たちから1年遅れでの卒業である。先に社会人となった彼らが都留を懐かしむのを目にする度に、理解出来ないと思っていた。私は都留が嫌いだった。 やりたい勉強が出来るなら、環境なんてどうだっていい。そんな思いで入学したものの、都会で華やかなキャンパスライフを謳歌する友人たちをSNSで見るたびに、嫉妬を覚え、惨めに感じた。こうなったら私にしか出来ないことを、今だからできることを、やりたい放題やってやろうと心に決めた。独学でロシアへ留学し、挑戦を恐れなくなった。テーマパークでアルバイトをし、人を笑顔にする幸福を覚えた。それらが重なって、2017年アスタナ国際博覧会日本館アテンダントとしてカザフスタンへ派遣された。何物にも代え難い、価値のある経験だった。異国の地で日本を見直し、ずっと海外へ向いていた目が初めて国内へ向いた。帰国後は、民俗論などの講義で知ったものをこの目で見たいと思い立ち、青森を旅行した。津軽の文化に魅了され、私はあっさり移住を決意してしまった。春からは地域振興の職に就く。今こうして振り返ってみると、脈絡が無いようでいて、全部しっかり繋がっている。 都留に来たから今があると思っている。正直、今も好きだとは言えない。けれど、文大を選んだことに後悔なんてひとつも無い。この4年間の経験は確実に私を構築しているし、きっと一生涯支えてくれると確信している。成長汝を愛し、汝を憎む比較文化学科4年高橋明梨ロシアで知り合った日本好きの少女とゼミの授業風景にて社会学科環境・コミュニティ   創造専攻4年小川壮一11都留文科大学報 第139号

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