学報139号
32/40
講演会だより 英文学会では同時通訳者として各国の大統領やノーベル賞受賞者などの通訳を経験後、現在は英語セミナー講師としてご活躍中の小熊弥生さんを講師としてお招きし、「通訳者の視点から見たグローバルと日本」と題して後期講演会を行いました。 講演の始めに小熊さんは通訳の実演をしてくださいました。内容は富士山学についてで、例えば「巫女」や「シャーマン」といったその分野における「背景知識」を身につけていることが、逐次通訳において英語の能力以上に必要なことであるということをまず教えてくださいました。小熊さんは短大卒業後にお金を稼がなければならないという必要性に駆られ、通訳者を目指し始めたそうです。しかし、当時の小熊さんの英語力はなんと英検4級、TOEIC280点。一体どうしてそこから通訳者になることができたのでしょうか。小熊さんはそれは「火事場の馬鹿力」だとおっしゃいます。自分にとって限界に近い状況を体験したことで、いざという時にどのように行動すればよいかが身についたそうです。また、学習において大切なことを二つ挙げられました。「感情と記憶の結びつき」と「学んだら教えること」です。感情と記憶は強く結びついています。例えば、2014年の3月11日と2011年の3月11日の出来事についてでは2011年3月11日のほうがより多くのことを記憶しているでしょう。強い感情を抱いた時ほど記憶に残りやすいのです。したがって、間違えることが最善の勉強法になるそうです。なぜなら、恥ずかしいという感情を抱いたことによって強く記憶に残るからです。そして、「教えること」は学習の定着率を示すラーニングピラミッドのなかでも一番高い割合を占めています。小熊さんは英会話学校の講師になったことによりアウトプットの機会を得てさらなる英語力の向上につながったそうです。 通訳者として国内外の人々と多く接する小熊さんに、日本人の良い部分と悪い部分について語っていただきました。日本人の良い部分は”polite”であることだそうです。相手のことを考え、他人に迷惑をかけないようにする性質があるそうです。また、どんな人も自分の仕事に誇りをもち、決して手を抜かないということを通訳を通して感じたそうです。悪い部分については、自分の意見を言えない、言わないところです。”Why am I here?”と自分自身に問い、自分を知る必要があるそうです。知らないことは、可能性を狭めて自分を不幸にしてしまうと小熊さんは考えています。また、今後の社会のためには、ものごとをインターナショナルに考えるのではなくグローバルに考えることが必要だともおっしゃっていました。 独自の学習方法によってTOEIC280点から、通訳者へと上り詰めた小熊さんですが、そのとても明るく情熱的な講演は、多くの学生たちの英語学習に対する意欲をさらに高めたのではないでしょうか。(英文学科2年 相楽 美結)2018年度英文学会主催後期講演会「通訳者の視点から見たグローバルと日本」講師紹介小熊弥生(おぐま やよい)1971年生まれ。1991年実践女子短期大学国文科卒業、2004年早稲田大学社会科学部卒業。株式会社ブリッジインターナショナル代表。著書に「TOEICテスト280点だった私が半年で800点、3年で同時通訳者になれた42のルール」など。開 催:2018年11月21日(水) 講演者:小熊弥生氏322019年3月8日(金)
元のページ
../index.html#32