学報139号
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今から100年前、映画が活動写真と呼ばれていた頃、それには音がなく無音だった。活動弁士は、活動写真すなわち無声映画(サイレント映画)を上映中に、その内容と映画のセリフを語りで表現して解説する専門の職業的解説者。そして今なお当時の映画に語りをつける、活動写真弁士がいる。 2018年11月、国際教育学科が「Learning Japanese Culture Through Popular Entertainment」の仕組みで「Special Lecture and Film Screening of The Serpent/Orochi with Live Narrator (benshi) and Music Performance by Kataoka Ichiro and the Otowaza Ensamble」と言うイベントを開催した。映楽四重奏は都留文科大学における二度目の実演を行った。映楽四重奏とは活動写真弁士、ピアノ、三味線、太鼓によるユニットで、無声映画時代に生み出された日本独自の上演形態である和洋合奏を基本とし、現代に通じるエンタテインメントとして無声映画を各地で上映している。 今回、上映したのは1925年に制作された阪東妻三郎主演の『雄呂血』である。従来、歌舞伎や講談などの以前から日本に存在する古典芸能を基とし、英雄豪傑・勧善懲悪といった物語展開が大勢を占めていた日本映画にあって、本作は悩める主人公が、その生真面目さゆえに誤解され破滅してゆく様を描いた作品で、当時の観客に圧倒的共感をもって受け入れられた。また作品終盤における約十分におよぶ長大なチャンバラシーンは時代を超えて通ずる身体芸である。 2019年には周防正行監督による活動写真弁士を主人公にした『カツベン!』の公開が予定されているが、本作は周防作品ともリンクするため、上映の意義は極めて高い物であった。 また今回、活動写真弁士を務めた片岡一郎氏は第一人者・澤登翠の一番弟子であり、海外公演にも積極的に取り組んでおり、これまで一八ヶ国で公演を行っている。(国際教育学科講師 Johan Nordström)2018年度国際教育学科講演会大衆文化から学ぶ ―日本無声映画は生きている―講師紹介片岡 一郎(かたおか いちろう)昭和52年 東京生まれ平成13年 日本大学芸術学部演劇学科を卒業平成 14 年 活動写真弁士の第一人者である澤登 翠に入門。澤登門下総領 弟子。 レパートリーは日本映画・洋画・中国映画・アニメ・記録映画と多岐に渡る。 これまでに手掛けた無声映画は約 350 本。バイオリン演歌を福岡詩二、紙芝 居を秋山呆栄より指導を受ける。これまで日、米、独、加、豪、克、伊など16ヵ国で公演。その他にも執筆や舞台出演、声優業もこなす。開 催:2018年11月28日(水) 講演者:片岡一郎氏講演会だより35都留文科大学報 第139号
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