都留文科大学学報(最終)【Web差し替え(R7
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木を育てる国文学科教授 加藤 浩司 何年か前からコナラやトチの実を拾ってきてアパートの裏庭に埋め、翌春出て来た芽を大家さんが引っこ抜かないうちに植木鉢に植え替えテラスで育てている。1年目は正しい埋め方を知らずそもそも芽も出なかった。2年目は芽が出たものの植え替えたらすぐ枯れた。3年目でやっと暑い夏、厳しい冬を越して枯れずに春また芽を出してくれた。 今、最初に冬を越した苗が3年で25センチほど、他は2年で15センチ程度である。なかなか大きくならないが、枯れないでいてくれるだけでありがたい。去年は他にクルミも埋めてみた。果たしてこの春芽が出るかどうか。 昔の人は孫曾孫のために木を植えたという。SDGsとか言っても大きな樹をためらいもなく切り倒す人たちなど私は全然信用しない。木を自分で育ててみて初めてその大切さがわかった。木は樹になるまで何十年、森は安定するまで何百年もかかるという。人も組織もいっしょ、長い目で育てられたらよいと思う。菁莪育才はヨモギやカブラ程度らしいが、大樹を育てるつもりで教育すべきだと最近は思う。 4年でできることはわずかだ。ドングリだった皆さんを30センチくらいにはできただろうか。自身が60過ぎてもこんな程度なのに、人を育てるなどおこがましい。それでも私はドングリを埋め、出て来た芽を少しでも多く育てたい。卒業する皆さんの中に教員になる方もおられよう。親になる方はもっと多かろう。可愛いドングリをいっぱい育ててください。おくることば122023年3月6日(月)

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