都留文科大学学報(最終)【Web差し替え(R7
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です。教員養成の充実は本学の伝統・魅力となってきたところですが、この点では、全都道府県に同窓会があり、その殆どが支部を結成して活動しており、教職支援センターと連携しつつ、教員志望者への採用試験対策プログラムを実施してくれていることも貴重です。また、民間企業や公官庁への就職についても、キャリア支援センターのスタッフが新規開拓と学生への相談・支援に取り組んでいます。 第6は、「DX時代対応能力の形成」への注力です。これは、前述の将来構想委員会の報告に基づき、2024年度からの新カリキュラムと新棟の活用プログラムに盛り込まれたものですが、新年度から前倒しして開始されます。種々のデジタル機器とそのソフトウェアの活用(デジタル化)はもちろん、API(Application Programming Interface)の活用もできる能力の習得も目指します。 J・K・ガルブレイス(1977=1978訳)『不確実性の時代The Age of Uncertainty』が邦訳され、不確実性が流行語となってから半世紀たった今日、事態はさらに進み、最近はVUCA(ブーカ)という表現が使われています。Volatility(不安定性・変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を連ねた用語です。ブーカの時代になり、不安定で不確実で複雑で曖昧な状況や問題・課題への対応が重大だと言われています。その通りではありますが、そうであるからこそ、その四つの要素の特徴を見極め、合理的かつ適切な判断・対応をしていくことが重要です。 Volatility(不安定性・変動性)は例えば気候変動や金融商品の価格変動などで使われますが、投機や市場に左右される価格変動と周期性のある気候変動と地球温暖化のような不可逆的な長期変動とでは必要かつ適切な対処・対応は異なるはずですから、その見極めと適正化・有効化が重要になります。Uncertainty(不確実性)は様々な事象が起こるかどうか、その確率や時期や規模や影響などが不確かな変化や状況を指すことが多いようですから、その事象の性質・構造・メカニズム・影響を見極め、科学的な分析と予測の精度を上げ、対処・対応能力を高めていくことが重要です。Complexity(複雑性)はさまざまな事象・現象や要素・要因が絡み合っている状況や諸問題とその特徴を指しますから、その絡み合いの構造を精査・分析し、解きほぐし、対応・解決・改善していくことが重要です。Ambiguity(曖昧性)は、多くの場合、二つ以上の意味やあり方・働きなどが重なり合っている場合に生じる難しさですから、その両義性・多面性や矛盾・背反性を見極め、適切に対処・対応していくことが重要ということになりますが、その前提として、共通理解とそのための情報共有と意思疎通(コミュニケーション)も重要だと言えます。 ともあれ、こうした時代にあって、学生さんには、その難しさにも対応してくことのできる能力を身に付けることが期待されます。そして、そうした種々の難しさを宿した社会とその未来を豊かにしていくためにも、〈共感し参加・協働する知性〉を形成していってほしいと思います。他方、教職員の方々には、その知性の形成に通じる豊かな学びと教育の充実に努め、もう一方で、本学の魅力を高め、選ばれる大学として発展していくことができるように、ご尽力していただきたいと願っています。 この3年間、都留市のみなさま、大学に関係するみなさまには、種々のご支援・ご協力を賜りました。心より感謝申し上げます。4月以降は、研究・執筆・言論活動に専念していく所存です。本学の発展とみなさまのご健勝・ご活躍を祈念しております。 以上、退任の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。入学式学長挨拶の様子3都留文科大学報 第151号

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