都留文科大学学報(最終)【Web差し替え(R7
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••••                        •••••••••• 都留文科大学2022年 学校教育学科主催講演会 ••••••日仏の比較教育における効果的な受容と伝達について(日本語による講演)開催:2022年11月18日(金)講演者:仏トゥールーズ大学教授 クリスチャン・ギャラン氏 2020年より本学と交換留学協定を結んでいる仏トゥールーズ大学との研究交流の一環として、同大学教授クリスチャン・ギャラン先生を都留に招聘し、学校教育学科主催で講演会が行われた。写真の通り、1405教室という大会場にも関わらず、最後列まで席が埋まるほどの盛況ぶりであった。ギャラン先生は、博士論文を「明治以降の日本の小学校での“読み方”教育の変遷」について書かれており、日仏の比較教育学を専門としている。特に両国の読み書き教育の方法や、近代から現代までの教育改革の歴史や思想についての比較研究をしてこられた。 今回の講演会のテーマは「日仏の比較教育における効果的な受容と伝達について」で、非常に流暢な日本語で約1時間、パワーポイントの資料を示されながら、二国間の教育を比較分析する際に注意すべき点について、具体的な例を挙げてお話下さった。例えば、「大学」「学習指導要領」「教科書」等ごく一般的な教育の専門用語やその背景を翻訳する際に、訳語として当てはめる言葉とその解釈次第では、大変な誤解や齟齬が二国間で生まれてしまう恐れがあるという。それらの複数の事例について、日仏両国の教育省でお仕事をされているという貴重な国際経験に基づいて分析しておられ、非常に興味深い内容であった。質疑応答では、一例として挙げられた日仏間の「大学進学率」調査における翻訳とその分析の間違いによって、実際に仏においてどのような障害が生じたのかについて質問があった。一例として、日本の高い高校卒業率と仏の大学進学率が意味するものの違いが全く考慮されず、同等のものとして解釈されてしまったことが原因で、仏の大学入学資格試験(バカロレア)の制度が、より多くの合格者を生み出す目的で改悪されるに至った事実を説明された。  講演会の後に行われた教育実践学系主催の交流会では、講演会より小さな会場に移動をし、講演会での内容だけでなく、学生からの個人的な質問等にも、気軽にかつ丁寧に答えて下さった。(学校教育学科准教授 瓦林亜希子)講師紹介仏トゥールーズ大学日本語学科教授。同大の日本語学科は、毎年約千人もの学生を迎えるほど人気があり、その立ち上げ時から学科を支え、学科長を約20年間務めた。現在は仏国民教育省から任を受け、フランス全体の高等学校における日本語教育を推進する視学官としても活躍。博士論文のテーマは「明治以降の日本における小学校での“読み方”教育の変遷」。主に、日本における近代教育制度の確立とその歴史的・現代的意義に関して研究を進めており、日本の近代以降の教育制度や思想についての論文や著作を、多数出版している。クリスチャン・ギャラン(Christian GALAN)講演会だより402023年3月6日(月)

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