都留文科大学学報(最終)【Web差し替え(R7
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講演会だより••••••• ジェンダー研究プログラム主催講演会 •••••••「セクシュアル・マイノリティを「取り残さない」社会をつくる」講演者:砂川秀樹さん 開催:2022年12月21日(水) 過去2年間は新型コロナウィルスの影響により、本講演会はオンラインでの開催が続いていたが、今年度は対面での開催となった。今年度は講演者として砂川秀樹さんを招待した。砂川さんは、いかに性別が社会において意識されているかを説明した。日々の生活に目を向けると、出生時の性別による振る舞い、表現が強く求められる。そのような性別の意識が、友人関係の形成に影響していると指摘する。例えば、日々の生活で異性愛者同士が「誰を好きか」を共有することで仲が深まるが、同性に性的指向が向く人は、そのような話題により作られる関係性から疎外される。砂川さんはそのような細かい傷が積み重なることで、セクシュアル・マイノリティは常に負荷を負っていると指摘する。それゆえ砂川さんは「多様な人たちを:Diversity」、「公正に : Equity」、「含みこむ : Inclusion」ことが、セクシュアル・マイノリティを「取り残さない」社会を作る上で必要不可欠であると論じた。 砂川さんは、セクシュアル・マイノリティが生きにくい世界を少しでも変えていくために我々がすべきことを提示した。具体的には1.相談を受けられるようなサポート体制を確立する「直接的支援」、2.セクターや分野を超えた理解と協力、そして社会全体のボトムアップによる「間接的支援」を行っていく必要があると主張した。特に「間接的支援」は、誰もがセクシュアル・マイノリティに日々関わる当事者であると意識すること、そしてセクシュアル・マイノリティに対する「壁づくり」に加わらないことなどが該当している。 講演後の質疑応答で砂川さんは丁寧に聴衆の質問に答えてくださった。質疑応答により、「取り残さない」社会を作っていくには、世界中の誰もがセクシュアル・マイノリティに対する当事者意識を持ち、少しでも賛同者を増やし、安心できる社会にすべきであると再確認することができた。(英文学科講師 黒川智史)文化人類学者/ゲイ・アクティビスト。明治学院大学ボランティアコーディネーター。都留文科大学卒業後に、東京大学大学院に進学し博士号(学術)を取得。文大在学中から LGBT や HIV の活動に参加、2000 年代には東京の LGBT のパレードを牽引した。著作に『新宿二丁目の文化人類学』、『カミングアウト』など。砂川秀樹(すながわ ひでき)••••• •••••講師紹介41都留文科大学報 第151号
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