都留文科大学学報(最終)【Web差し替え(R7
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 都留文科大学を2023年3月で定年退職をします。私は2018年4月に地域社会学科の発足にともない実務経験のある教員として採用されて赴任しましたが、地域社会学科では「国際経済論」を担当し文大で5年間お世話になりました。都留では谷村町に単身赴任をし、大学の研究室で過ごすことが多かったのですが、静かで緑あふれる自然豊かな環境で2号館から外を眺めるだけでも落ち着いた気分になりました。また幸せなことに、東京では味わうことのできない富士山の伏流水を普通に飲めることは素晴らしいことでした。これは東京の住居に戻ってからその差を感じることと思います。5年前赴任した時の文大生の印象ですが、非常に優秀で授業の最後に出してもらう紙のリアクション・ペーパー一杯に綺麗な楷書でコメントを書いてくる学生が多いことには正直驚きました。基礎学力の高さと共に彼らが高校時代に大変真面目に勉強をしてきたことを感じさせました。2020年冬からの新型コロナの蔓延で授業はオンラインに変更、学内は一時立ち入り禁止になるなど、経験したことのない大変な困難に直面しこの時期、学生の大学生活は充実とはほど遠かったと思います。またリアクショペーパーは学内ネットに提出するという方法に変更しましたが、あの紙一杯に書いてもらうことがなくなったことは大変残念でした。 文大に赴任して2年目に学科長を仰せつかりました。私にとっては全く予期していないことではじめはお断りしたのですが、熱心な説得に負け結局3年間務めることになりました。拙い学科長でしたので、学科内のさまざまな問題への対応を求められ大きなストレスを感じたこともありましたが、学内全体の会議などを通じて全学のみなさんとの接点ができるという側面もありました。学科のみならず他学科の先生方には個人的にも親しくして頂き、物心両面で助けて頂いたことには心より感謝しています。 2021年度には新学科である地域社会学科が完成年度を迎え、最初の卒業生を送り出しました。新入生のころから4年間見てきた学生たちが巣立つのに立ち会うというのは特別なものでした。どこまで彼らの大学生活に関われたのかは分かりませんが、学生たちの一生の中で、多くの学生が一人前の社会人に踏み出す前に教員として十分なサポートができたのだろうか。この感情にしばらく思い悩むことになりました。 来年度から東京でもうしばらく大学教員を続けることになりましたが、文大での5年間は特に教育の面で学ぶことが多く、そのお陰で元々は企業人であった自分が大学人の末席に加わることができたのかと思います。これからも都留文科大学のますますの発展と教職員みなさまのご活躍をお祈りいたします。企業人から大学人になった5年間 地域社会学科教授 春日 尚雄地域社会学科1期ゼミ生とさよなら文大7都留文科大学報 第151号

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