都留文科大学学報(最終)【Web差し替え(R7
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 2017年の着任のあいさつ原稿のタイトルは「英語が『私の言語』になるには」だった。本学で出会った学生のみなさんにとって英語が少しでも近い存在になっていたらうれしいが、少なくとも、英語で「私」を表現し、他の学生の「私」を理解することの喜びを感じてくれたということがわかる実践ができたと思う。 本学共通外国語の英語科目で長年にわたりカリキュラムに含まれていたCALLシステムを使用した授業において、受け身になりがちな学習の中に自分を発信するタスクを導入したいと考えた。そこで、教科書で紹介される多くのテーマについて自分の立場や考えをプレゼンテーションスライドにまとめ、「ポートフォリオ」と称して作品化し、それをクラスメイトに紹介するタスクを学期に2回行った。タスクでは、学生を2つのグループに分け、1つのグループが発表し、もう1つのグループは発表を聞く相手を探して動き回り10分間で4名の発表を聞くというものだった。最初はHelloと言って話を始めることもできないくらい緊張していた学生たちも後期末の4回目にはすっかり慣れ、普段の授業では見せない笑顔や大きな声で英語のやり取りする姿を見せていた。また、国際交流センターや国際教育学科の方々のご協力を得て留学生にも参加していただき、学生は本物のコミュニケーションを体験できた。2019年度に前期と後期にそれぞれアンケートを実施し、このタスクについて自由に書いてもらったところ、次のようなコメントをもらった。 「少ない時間の中で二回このセッションをする時間をとれたということは私自身にとってとても大きな財産になると思っている。英語で自身を表現することは日本人が苦手としている点でそれができるというところがとても魅力的であったと思う。」(前期のみ履修した方だと思われる) 「外国人の方にも自分の作ったスライドを見に来ていただき、貴重な体験をすることができた。外国人の方からのアドバイスをもらったので、英語にもっと自信をもっていきたい。ほかの人の趣味や考えを知ることができて楽しかった。」(後期末のコメント) 「アクティブラーニングという形態のこの授業は、みんなのことも知れたし、自分のこともわかりやすく表現できたと思うので、とても身になったと思う。」(後期末のコメント)英語で表現する苦しみを感じながらもお互い英語でわかり合えた様子が感じられた。英語が彼らに近づいた瞬間だったのではないだろうか。 今後は本学での経験を活かし、一人でも多くの日本の生徒たちにとって英語が「私の言語」になれるよう指導できる英語教師の育成や、現職英語教員が学び直し修士号を取得する大学院コースを担当します。これまで出会ったすべての学生のみなさん、語学教育センター所属の先生方を始め多くの先生方のご教示・ご協力、事務局の皆様のご支援に対し心から感謝いたします。ありがとうございました。英語は「私の言語」になりえたか語学教育センター准教授 豊嶋 朗子学生と留学生によるコミュニケーションタスクさよなら文大9都留文科大学報 第151号

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