都留文科大学学報(第152号)
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令和5年3月に本学の学部を卒業した795名の就職率(就職者/就職希望者)は、97.4%でした。前年度よりも1.3ポイントの上昇です。前年度は女性が苦戦したので今回も心配しましたが、初等教育、英文、比較文化、社会、国際教育、地域社会の各学科では、女性の就職率が100%となり、全体としても好調でした。また、「就職しない」と答えた卒業生の半数にあたる53名は、大学院や留学など、引き続き学び続ける道を選んでいます。これは、前年度と同数でした。 業種別に見ると、教員が前年度比12名増の194名。このうち、公立学校に正規採用されたのは、20名増の120名、臨時採用が10名減って58名でした。正規採用が大きく伸びたことは、もちろん喜ぶべきですが、全国的に教員採用試験の倍率が下がっている中では、採用数や採用率にのみ意識を向けるのではなく、学校現場で働き甲斐をもって教職を続けられる基盤を学生時代に身に付けることが重要と思います。 公務員の道に進んだのは124名で、前年度より約2割増となりました。本学は、教員養成で全国的な評価を得てきましたが、公務員になる人も増加しており、近年では、公立学校教員の正規採用数を上回るようになっています。背景には、地元へのUターン、安定志向、多様化する業務への関心など、様々な要因があると思われますが、公務員志願者へのバックアップをさらに充実させ、ニーズに対応する必要があると認識しています。 企業就職は、353名で、前年度比20名の減となりましたが、業種の幅が広いことは、本学卒業生の「汎用性」の高さを現わしているように思います。山田淳・前キャリア支援副センター長によると、文科大学である本学卒業生の言語能力の高さは、ICT関連企業からも高く評価されているとのことです。理系が有利との印象がもたれやすいICTですが、日進月歩する技術や知識は、むしろ入社してから学ぶ面が多く、就職前には、ベースとなる言語能力や教養を身に付けていることが重要だと言われています。ICTを直接の対象とする情報通信業は、本学卒業生が多く進む業種の一つですが、どの業種でもICTへの対応が欠かせない時代ですから、是非この優位性を活かす発想を持っていただければと思います。 生成系AI(Chat GPT等)の急速な進化も世論をにぎわしていますが、あくまで道具である以上、問われるのは、使う人間の知恵や感覚、そして、どのような社会構想の下にAIを位置づけるかであり、それは人文・社会科学的な課題です。その上で、AIによって既存の作業や職業が変容したり、新たな職業が生じたりもするこれからの時代には、一度学んだ知識やスキルに安住するのではなく、柔軟性をもって学び続けることが不可欠です。そうなると、学び続ける条件があるかどうかということも職場選びの基準の一つとして重要になってくるのではないでしょうか。昨年度の就職状況を振り返る副学長(兼キャリア支援センター長) 田中 昌弥就職率は、1.3ポイントの上昇教員の正規採用と公務員が大幅増ICT、AIの活用において求められる教養202023年7月3日(月)
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