都留文科大学学報(第153号)
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私は八月下旬から三週間、母校の中学校で教育実習を行いました。三週間というわずかな期間で、計24回の授業、日々の生活記録のコメント返しや放課後の学校祭準備活動など盛りだくさんの日々を送っていましたが、この実習を端的に表すのならば「生徒ととにかく一緒にいた三週間」、そして「教員として勉強すべき事に気づいた実習」だったと感じます。実習第一週目は不安と緊張の日々でした。朝の登校時間の挨拶から始まり、放課後の学校祭準備活動まで配属学級で生徒と共に過ごし、少しずつ生徒のことを知っていきました。授業見学から始まった教科の実習も毎時間が新しい気づきの連続で、現場の先生方から得た学びをこぼさないよう付箋にメモしながら臨んでいました。授業の進め方や板書の取り方、生徒の反応などを見て、夏休み中に用意していた指導案は大きく変更しなければ使いものにならないと実感し、生徒の実態に合わせ、変更を加えた指導案で第一回の授業に臨みました。第二週目は、本格的に学級指導や授業に関わるようになりました。生徒の生活記録のコメント返しを担当するようになり、そこでもコミュニケ―ションをとることができました。「先生―」と話しかけに来てくれる子、普段は積極的に来なくても生活記録に書いてくれる子、私の席の周りにそれとなく立って待ってくれる子、様々な生徒がいて、生徒との関係の築き方は十人十色だと実感しました。また、本格的に授業を組み立てるようになり、指導案を書くことの意義も徐々に会得することができました。国語という教科で養いたい力、その単元での目的を意識することが重要なのだと分かりました。それは大学で主に学んできた学問としての国語とはまた別の視点であり、自分には足りなかった点だと気がつきました。第三週目は、実習の集大成である研究授業と最後のお別れの週でした。それまでの日々で事前準備の大切さ・指導案の意義を学び、精一杯の準備で研究授業に臨むことができました。前日生徒に、「明日は研究授業があるのでよく寝て、元気に授業に臨んでください」と話すと、生活記録に「早く寝ました」と書く子や、その日の学級目標が「研究授業頑張ろう」に設定されていて、生徒の温かさを感じるとともに、三週間で確かに関係を築けたのだと感じ、嬉しく思いました。今回の実習を通し、母校と言えど、自分が通っていたときとは生徒の様子は全く違うことに気がつきました。「目の前の生徒」に向き合うこと、偏見や自分のものさしではかろうとしないことを教員になったときの軸に据えたいと強く思いました。残りの大学生活、学問ではなく教科としての国語の在り方についても学び、教員として現場に立った時は机に向き合う時間よりも子供に向き合う時間をとりたいと思います。最後になりますが、ご多忙の中、実習を受け入れ、ご指導いただいた校長先生をはじめとする先生方、短くても充実した実習になるようにとご配慮いただいた指導教諭の先生には深く感謝しております。生徒と過ごした三週間国文学科3年伊藤 璃虹教育実習報告2年生国語「字のない葉書」の研究授業の様子13都留文科大学報 第153号

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