学報154号
14/52
おくることば大学院修了という門出を迎えた皆さんに、上記の言葉を贈りたい。これは仏の詩人ルイ・アラゴン(Louis Aragon 1897-1982)による「ストラスブール大学の歌」という作品中の「教えるとは共に希望を語ること/学ぶとは真実を胸に刻むこと」という有名な一節からの引用である。私自身、教育学を学び始めた学生時代にこの言葉に出会い感銘を受けた。第二次大戦中、独に隣接するアルザス地方にあったストラスブール大学が、ナチスからの迫害を受け仏中部に一時移転していた時代に、逆境の中でも教え学び合うことに希望を見出そうと書かれた詩だ。原文は「Enseigner c'est dire espérance, étudier délité」となっており、訳によっては「誠実を胸に刻むこと」とするものもあるが、誠実を表す「délité」には「事実を曲げないこと」という意味もあることから、「真実」という言葉が充てられたのだろう。この2023年3月に卒業する臨床教育実践学専攻の皆さんは、8名という近年では大所帯の同期の人数だった。私の研究室がちょうど院生室の真向かいにあり、この2年間常に皆さんの談笑する声がこちらにも届いており、微笑ましく且つ羨ましく思っていた。学びとは、自分とは異質の他者との対話の中でこそ深まるものであり、そこからそれぞれの「真実」を手繰り寄せ、修士論文という目に見える形に昇華することこそが、研究の過程と成果ではないか。皆さんは、同期の8名でまさに学び合うことで、人間的にも成長し、修士論文という一つの研究的「真実」を掴んだことを、どうか一生の宝とし自身の土台として欲しい。卒業本当におめでとう。大学院文学研究科臨床教育実践学専攻准教授瓦林 亜希子学ぶとは真実を胸に刻むこと142024年3月4日(月)
元のページ
../index.html#14