学報154号
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大学大学院人間文化創成科学研究科在学中)、山田恭弘氏(東北大学大学院国際文化研究科在学中)で、比較文化学科における多様で複雑な世界への知的探究をきっかけに、それぞれ日中関係史、中国農村研究、白話小説翻訳史という異なる分野についての学びを深めています。パネリスト3名は、それぞれの研究テーマに関連する「共生」と「記憶」の問題を提示し、各論の分析や評価を行いました。また、パネリストの質問やコメントに対し、各章の著者である比較文化学科の教員たちもリプライをおこない、和気藹々としたなかにもアカデミックな厳格さの漂う、比較文化学科らしい雰囲気に会場がつつまれました。第3部では、比較文化学科における学生の自主的な学びの熱心さを象徴する活動である「比較文化学会」による活動助成金などを獲得し、フィールドワークや資料調査を行った現役学生4名が研究成果発表を行いました。発表者は、比較文化学科3年の見上響さん、髙橋夏未さん、そして4年の李俊儀さん、大野千緒さんで、それぞれが国内外の様々な地域でのフィールドワークにおいて実施した参与観察やインタビューの結果を報告しました。そして、上野貴彦講師による閉会の辞とともに、シンポジウムは盛会のうちに終了しました。本シンポジウムは比較文化学科の30周年を祝うものであったと同時に、戦争・紛争問題、社会経済的な格差の拡大を背景とした排外主義やポピュリズム政治の興隆、国内外のハラスメント事件の頻発、領土問題とその背景にあるナショナリズムや伝統的価値観の相剋、さまざまなマイノリティ性の交差のなかに顕在化した人権問題など、比較文化学科の研究・教育がこれからも真摯に向き合わなければならない問題が山積していることを確認する機会にもなりました。批判的思考に根ざしながらも、同時に温かく肯定的な参加者のフィードバックを受けとめるなかで、比較文化学科教員一同、学内外の関係者の皆様のご協力を仰ぎつつ、これからも教育・研究活動に一層邁進する決意を新たにしました。30周年記念論集『共生と記憶の比較文化論―ともにつくる歴史と現在』3都留文科大学報 第154号

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