学報154号
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講演会だより2023年11月15日、ジェンダー研究プログラム運営委員会主催の講演会「中国女性の装いと身体 纏足からチャイナドレスへ」が行われた。講師の謝黎先生は、日本人にとってなじみがない中國の美の基準や、衣服で身分を示す文化であることから、纏足の風習の広がりとそれが長らく維持された理由について説明していった。謝先生によると、神秘性がある纏足には、男女問わず魅力や誇りを感じていたという。精神的、肉体的に辛くあるものの、纏足の有無が結婚の判断基準になるほか、纏足ではない女性が戦争で殺されることもあった。民族的指標や社会的価値からも、纏足には重要な意味があった。20世紀初頭から普及したレントゲン撮影写真によって、その苦痛が可視化されると中国国内の纏足の価値が崩れていき、纏足を解く「放足」が強制されるようになったそうである。また、チャイナドレスの原型となった旗袍は、時代が下るにつれて身体のラインに沿うようになっていった。男性の服装を女性も用いることで男女平等の主張を含むようになるなど、装いに多様な意味が込められていたことがわかった。纏足、チャイナドレスは、歴史背景と深く関係しており、その歴史を内や外から、そしてジェンダー的視点から俯瞰することができたことが今回の講演会で得た学びであった。歴史から女性たちの強く生き抜こうとする姿勢を感じられた。最後に、「人間はありのままの身体では満足しない」との言葉には、さまざまな身体変工を行う現代を生きる私たちにも当てはまる。散髪、洗髪、化粧や付け爪、脱毛などは何のために行うのか、女性にとって理想の女性像や美の基準とは一律なのだろうか、考えさせられる講演であった。(比較文化学科2年 須田 晏奈)開 催 11月15日(水)講演者 謝 黎氏講師紹介謝黎(しゃ れい)謝黎先生は、2021年より比較文化学科の非常勤講師をつとめるほか、ジェンダー研究プログラムの「ジェンダー研究ⅠA」「ジェンダー研究ⅠB」を担当している。チャイナドレスほかの服飾コレクターとしても知られ、これまでに神戸ファッション美術館、長崎歴史文化博物館ほかでコレクション展示がされている。主要著書は『チャイナドレスの文化史』『チャイナドレスをまとう女性たち:旗袍にみる中国の近・現代』『チャイナドレス大全:文化・歴史・思想』(すべて青弓社)。ジェンダー研究プログラム運営委員会主催の講演会中国女性の装いと身体纏足からチャイナドレスへ422024年3月4日(月)
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