学報154号
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文大だより2023年7月の4週間、IWL (The Institute for World Literature)主催の世界文学セミナーに参加した。このプログラムは毎年開催地が変わるが、今年はIWLの本部であるハーバード大学が会場となった。世界文学の研究者が教授陣として集まる上、ゲスト講演者も豪華である。参加者もこの分野に強い興味を持つ研究者と学生で、刺激の多い一ヶ月をアメリカで過ごすことができた。このような貴重な機会を与えてくださった都留文科大学にまず感謝申し上げる。セミナーには事前に指定された文献を読んでから参加する。樋口一葉やジュンパ・ラヒリなどの小説や、張愛玲の映画、あるいはジュディス・バトラー、ジャック・デリダ、ベネディクト・アンダーソンといった理論家の文献など、さまざまな小説や論文を読む機会となった。これらの文献を元にディスカッションが進んでいくため、刺激的な時間だった。プログラムにはコロキアムという学生による研究会の時間も設けられている。私は社会学と世界文学をテーマにしたグループに属して、修士論文で取り組んでいる作家Yiyun Liの短編について発表した。近い分野の研究者の集まりなので、クィア理論やフェミニズムの専門的な観点からフィードバックをもらうことができ、非常にありがたかった。参加者はハーバード大学の図書館を利用できるため、研究に関係する貴重な資料にたくさん当たることができたことも大きな収穫である。ホミ・バーバやギッシュ・ジェンなど、著名な講演者のお話を聞く機会にも恵まれた。一日の日程が終わるとプログラムでできた友人たちと散歩したり、美術館を訪れたり、お茶をしたり、ご飯を食べたりと、ボストンの夏を楽しむことができた。平たい桃やさくらんぼ、ブリトーやジェラートや様々な種類の中華料理など、美味しい食べ物を楽しめたことも幸せだった。今思い返しても、誌面に書き切ることができないほど充実した日々を過ごすことができた。現地でも体調などを気にかけて下さった加藤めぐみ先生と、応募の段階からサポートして下さった指導教員の中地幸先生には特段の感謝を申し上げる。ハーバード大学世界文学セミナーに参加して大学院文学研究科英語英米文学専攻井上 明紀クルージングディナーにて(本人右から3人目)閉会式中、ダムロッシュ先生からの証書授与(筆者の一眼レフで友人撮影)442024年3月4日(月)
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