学報154号
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長かったコロナ禍を経て、少しずつ日常が戻ってきました。都留を走る富士急行線も、昨年ごろから一般客に加えてインバウンドの外国人観光客が徐々に戻りはじめ、季節によっては通勤者や地元民が席に座ることもできないほど車内が混雑しています。ちょっとしたオーバーツーリズムで困惑することもありますが、グローバリゼーションの回復によって地域経済が息を吹き返す様子を肌で感じられるのは嬉しいことです。欧米諸国、豪州、韓国、マレーシア、インド、タイ・・・などなど、車内で交わされる様々な言語や異国のほのかな匂い、人々のにぎやかな表情やしぐさなど、「異文化」に触れながら通勤しています。文化や宗教が違っても同じ地球という列車に同乗し旅を楽しむことができる・・そんな平和な光景が世界中で見られる日が、一日もはやく訪れるといいな・・・心からそう思います。ところで、先日列車の中がぎゅうぎゅうで席に座れず、仕方なく立ったまま車窓の風景をぼーっと見ていると、見る角度が変わったことでこれまで見えなかった「桂川」の凛とした姿が眼下に飛び込んできました。都留市周辺は豊かな自然に囲まれ、富士山から湧き出る水が豊富なことで有名ですが、日光に照らされ水面がきらきらと流れる桂川のなんと壮麗で美しいことか!! 列車内が混んでおらず、立って車窓から見下ろすことがなかったら、ずっと知らないままだったかもしれません。いつもと違う角度で、新しい視点でものを見ることの大切さをあらためて学んだ瞬間でした。3月は、旅立ちの季節。都留での思い出を胸に卒業生たちが全国に旅立っていきます。そんな卒業生たちに、マルセル・プルーストの言葉をはなむけに送りたいと思います。「真の発見の旅とは、新しい景色を探すことではない。新しい目で見ることなのだ。」(『失われた時を求めて』より) 卒業生のみなさん、ご卒業おめでとう! 新天地でのご活躍を心よりお祈りいたします!都留文科大学広報委員会都留文科大学報 第154号 2024年3月4日発行吉岡 卓(委員長)・日向良和(副委員長)・佐藤明浩(担当副学長)・黒川智史・上野貴彦原 和久・堤 英俊・菊地優美・神長 唯・安富博史(企画広報担当)・大輪知穂(IR担当)有馬治子(キャリア支援センター担当)・天野麻由(企画広報担当)・奥脇開斗(企画広報担当)〒402-8555 山梨県都留市田原3-8-1☎0554-43-4341 URL:https://www.tsuru.ac.jp/編集後記国際教育学科 原 和久富士山駅からの眺め (筆者撮影)インクルーシブ教育ハンドブック文化的持続可能性とは何か――文化のゆるやかな共鳴を捉えるためにマーガレット・アトウッド『侍女の物語』を読む―フェミニスト・ディストピアを越えてラニ・フロリアン 編・原著堤 英俊 他 訳2023年8月発行北大路書房◇堤 英俊 学校教育学科 准教授原知章 編著山越英嗣 他 著2023年8月発行ナカニシヤ出版◇山越 英嗣 比較文化学科 准教授加藤 めぐみ・中村 麻美 編2023年12月発行水声社◇加藤 めぐみ 英文学科 教授ぶんいだ堂
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