学報154号
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1999年に着任してから四半世紀が経った今でも、初めて大学に入り、公募の最終面接を受けた日のことを鮮明に覚えています。それも含めて、この間の様々な場面が追想され筆が進まない……。長きにわたりお世話になったことに心から感謝し、まずはこの場を借りて御礼を申し上げます。1999年と言えば、ノストラダムスの予言と世紀末ブームが沸き起こり、EU加盟国のうち11カ国において単一通貨「ユーロ」が誕生した年(流通は2002年)です。そもそも西暦はキリスト教における救世主イエス・キリストの誕生を紀元(元年)とする数え方。「千年王国」の言葉通りキリストが再臨し、この世を統治することを祝す意味合いで「ミレニアム」が唱えられますが、この言葉が日本にもたらされたのも1999年(平成11年)のこと。私が都留文科大学の教員として初めて接したのは正にこのミレニアム世代であり、この学生たちは皆、20世紀に生まれた昭和の子でした。学生の資質が変わってきた、これはよく聞く言葉です。ただ私たち自身が「今の若い者たちは!?」と言われ続けてきたことを思えば、その時流にあった見方、接し方、対処があるのでしょう。事実、都留の学生はやはり素晴らしいと思うことが多く、授ける身でありながら多くの示唆をいただけた、と感じています。昭和から平成、そして令和へと時代は進み、今在学する学生たちは皆、21世紀に生まれた平成の子。まもなく令和生まれの学生が入学してきます。大学を創設した頃を知る先輩方と共に時を過ごせたことは幸いで、その毅然としたお姿を、常に指針としながら歩んできました。当時は大学の規模も今ほど大きくはなく、教職員が一体となり手作り感ある運営がされていたことを、懐かしく思い返しています。もちろん大学が変容を遂げる中でも、学生思いの教員が、事務方が、熱い面持ちで立ち回り、そこに流れる深い思いを共有し今に繋いできたことは感動的であり、その一端を担ってきたことを自負しています。「繋げる」とは、努力を成功に結び付けること。ただ結果の予測はできませんし、後になってあの時の経験が今に生かされていると気付くのもよくあること。だからこそ、今を精一杯生きることこそ大切である、と思えるのです。この2月3日にうぐいすホールで開催した「最終講義・清水雅彦テノールリサイタル」の「ご挨拶」の最後の部分を転載させていただきます。『たくさんの思いが溢れるここ〈うぐいすホール〉で最終講義を開催させていただくことは大きな喜びであるとともに、平和・平穏がままならない世の中にあって、さらに真摯に歩みたい、歌い続けたい、未来へ繋げていきたい、との思いを強くしています。ともに歌い、想い、研究に勤しんでくれた多くの学生たち、大学教職員の皆さん、都留市民の皆さん、そしてすべての皆様への感謝とともに……。』 繋げるということ学校教育学科教授 清水 雅彦さよなら文大卒業演奏会(うぐいすホール2024.1.27)後にゼミ生と9都留文科大学報 第154号
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