大学報155
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はじめに、在外研究の機会を与えてくださった本学、煩雑な諸手続きを支えてくださった事務局の皆様、1年にわたる渡航を後押ししてくださった比較文化学科の同僚に御礼申し上げます。在外期間中にはスウェーデン南部にあるルンド大学の社会科学部ジェンダー学科に客員教授として受け入れていただきました。同大学は私がインドに留学していた2004年に国際会議参加のために訪れたことがあるものの、知人はゼロでした。まったく面識がなく、英語での研究成果も少ない私を快く受け入れてくださった同学科には感謝の念に耐えません。ルンド市は小規模ながらも、世界中から学生や研究者が集まる学園都市です。そのため、大学では研究会はもちろんのこと、諸会議なども英語で行われることが多いです。私は客員としての身分にもかかわらず、月例の学科会議や、学科の宿泊研修などに参加させていただきました。さらに、在籍・施設利用料(bench fee)なしで研究室が貸与され、図書館の豊富な電子資料へのアクセスも享受しました。ジェンダー学科では社会人類学者のヘレ・ライドストロム教授が受入研究者を務めてくださり、公私ともにお世話になりました。同学科ではフェミニズムのみならず、私が関心を抱きつつも不勉強であったLGBTQ+にかかわる研究について、昼食やコーヒータイム(ka)時の会話、研究会での議論などを通して同僚たちから多くを学びました。また、私も2度報告した学科の内部セミナーや(写真1)、第一線で活躍する研究者を招いた学科主催の定例研究会では、女性や性的マイノリティをとりまく権力、既存のジェンダー秩序に抗う人々の集合行為と主体性といったテーマについての理解を深めることができたと思います。ルンド大学には北欧最大の南アジア研究の拠点である、スウェーデン南アジア研究ネットワーク(SASNET)があります。SASNETでは北欧はもとより南アジア出身の研究者との交流を図るとともに、年次シンポジウムでも報告する機会に恵まれました(写真2)。さらにライドストロム教授には社会科学部の批判的危機研究会にも加えていただき、不平等と社会的レジリエンスを軸に福祉国家、移民、紛争、開発をテーマとする研究者らと交流を深めました。在外研究期間中には日本語での原稿を2本、リレーエッセイを3本執筆するとともに、2本の英語論文の草稿を執筆しました。英語論文については修正を施したうえで、国際誌に投稿する運びとなります。いずれも、計画書作成の段階に留まっている英文での書籍出版につなげるのが当面の目標です。スウェーデンでは春から初秋にかけて爽やかな季節を満喫し、日の短い12月には現地調査のため、科研費を用いてインドに戻りました。このように、在外研究期間中に私が意識したことは、研究のモードと健康な生活を取り戻すことでした。当初、高らかに打ち立てた研究目標は未達成ですが、ここ都留でも焦らずに研究課題を遂行していこうと思います。比較文化学科 教授 佐藤 裕ジェンダーと開発論×南アジア研究を求めて北欧へ写真1:ジェンダー学科の内部セミナーでの報告。投稿論文等の原稿を事前に共有し、報告の際に参加者全員からフィードバックが得られるしくみになっている。写真2:スウェーデン南アジア研究ネットワークの年次シンポジウムにて。学外研究報告182024年7月8日(月)

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