学報157
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おくることば私が初めて自動車の運転席に座ってエンジンをかけ、ハンドルを握ってアクセルを踏んだとき、隣に座っていた教官が言った。「進んでいく道路の真ん中をみてください。見ている方向へ進んでいきます。」教習所内につくられた緩やかなカーブを曲がるのに、どれだけハンドルをきれば良いのか見当もつかなかった私だったが、言われた通りに道の真ん中を見つめていたら、自然と少しずつハンドルを握っている腕が動いて、車がカーブに沿って曲がっていった。驚いた。眼と脳と腕の筋肉が勝手に連携してくれたおかげなのだろうと思うが、私にはとても印象的な経験だった。それから20年以上経ったいま、車の運転をするときにこの教官の言葉を思い出すことはないが、自分を含めた人間をみるときに思い出すことがある。人も同じだな、と思うのだ。素敵だな、と思う人と長く付き合っていると、その人の素敵さがこぼれ種のように、いつの間にか自分に少し根付いていることに気がついて嬉しくなるときがある。意地悪な人だな、と思いつつも我慢して一緒にいたりすると、いつの間にか自分が意地悪なウイルスに感染していることに気がつくときがある。なるほど、見ている方向へ進んでいくんだな、と妙に納得する。これから皆さんが行くところがどのようなところで、そこにどのような人がいるかは分からないが、このことを頭の片隅に置いておいてほしい。できれば、こんな風になりたいな、という人を見つけて、なるべく長い時間をその人と過ごした方がいい。5年、10年経ったときに、たぶん私の言いたかったことが分かってもらえるんじゃないかな、と思っている。地域社会学科准教授 小島 恵見ている方向へ進んでいく 2024年にリリースされた生成AI(Felo)のプロンプトに、「比較文化学科を今年卒業する学生に600字程度でおくることばを書いてください。」と入力してみました。出力結果を下に示します。--- 卒業生の皆さん、このたびはご卒業、誠におめでとうございます。 比較文化学科での学びを終え、新たな一歩を踏み出す皆さんに、心からの祝福とエールを送ります。この学科での学びは、単なる知識の習得にとどまらず、異なる文化や価値観を理解し、多様性を尊重する力を育むものでした。皆さんがこれまでに培った視野の広さや柔軟な思考力は、これからの人生において大きな財産となることでしょう。 現代社会は、国境や文化の壁を越えたつながりがますます重要になっています。皆さんが学んだ異文化理解の力は、グローバルな場面だけでなく、地域社会や日常生活の中でも大いに役立つはずです。他者との違いを受け入れ、共に新しい価値を創造する力は、これからの社会をより良いものにする原動力となります。 これからの道のりでは、期待とともに、時には困難や迷いも訪れるかもしれません。しかし、比較文化学科での学びを通じて得た「多様な視点を持つ力」や「対話を通じて理解を深める力」は、どんな状況でも皆さんを支えてくれるはずです。失敗を恐れず、挑戦を楽しむ心を忘れずに、前に進んでください。 卒業はゴールではなく、新たなスタートです。これからの人生の中で、皆さんが自分自身の可能性を信じ、夢や目標に向かって歩み続けることを心から願っています。そして、どんなときも、自分らしさを大切にしてください。 最後に、皆さんの未来が希望に満ちたものであることを祈りつつ、これからのご活躍を心より期待しています。改めて、ご卒業おめでとうございます!--- みなさんが本学で学んでいた間に、良い、悪い等、様々な評価がありますが、科学技術はここまで進みました。この「進歩」を受け入れるか、それとも、否定・排除するかが、問われています。そもそも、この問いに対する「正解」があるのかどうか。わたしたち一人ひとりの智慧が問われているように思います。卒業を機に学びをやめてしまうのではなく、学びづつけることが必要です。卒業を祝福すると同時に、新たな課題をお示しして、私からのはなむけの言葉といたします。比較文化学科准教授水野 光朗おくることば13都留文科大学報 第157号
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