学報158号
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 2025年4月付で文学部国文学科に着任した阿部真也と申します。昨年度まで東京大学の国文学研究室で助教を務め、この度、都留文科大学で研究・教育に従事する機会をいただきました。70周年の大きな節目の年に専任教員を拝命することになり、身の引き締まる思いです。 専門は近代文学で、特に江戸川乱歩や夢野久作が活躍した探偵小説ジャンルについて考えております。中でも私はややマイナーな探偵小説家・久生十蘭を主軸に据え、ジャンルの成立と変遷を時代・社会状況との関わりから研究してきました。周辺的な作家であるが故に十蘭からはジャンルの抱える多くの課題が見えてきます。探偵小説を単なる娯楽として読むのではなく、ジャンルが時代状況に対して持っていた社会批評的な可能性を明らかにすることを目指しております。今後は松本清張を始めとする社会派推理小説にも研究を広げたいと考えています。 私は中学校・高等学校の現場で国語を教えていた経歴もあります。教員養成の歴史を持つ本学は私の知識や経験を生かせる格好の場と思っております。70年の伝統を守り、そして次世代へ受け継いでいく大学の一員として認められるよう、精進していく所存です。何卒よろしくお願い申し上げます。着任のご挨拶国文学科 講師阿部 真也江戸川乱歩『二銭銅貨』(「新青年」大12・4増大)。探偵小説といえば「翻訳」が当たり前であった当時に、「創作」探偵小説と銘打って掲載される。以後、日本の創作短篇探偵小説が一挙に花開く。文大に着任するにあたって新教員紹介122025年7月7日(月)

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