学報158号
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 私の専門は発達精神病理学で、私の学術的関心は「小児期の逆境体験と保護的・補償的体験は、発達や精神的健康にいかに影響するか」という点にあります。貧困や虐待、自身や家族メンバーの障害や疾患、大人から無条件に愛されること、仲間から受け入れられることなどは、その人の人生の歩みにさまざまに影響するということが、これまでに明らかにされています。私は、この文脈において、ヤングケアラーと大学生ケアラーについての研究を継続しています。家族のケアを担う子どもと若者が、その体験をめぐって心理・社会的な不適応を発現してしまうことを防ぐにはいかなる支援が必要かを、日々検討しているところです。 私は、都留文科大学の学生と向き合うなかで、「誰かに貢献するために学びたい」という方の多さを実感しています。教員として、文化の継承を通じて、新たなシステムの創成によって、グローバルな活動でもって…と、それぞれの学生が実に多様なかたちで、やがて誰かの生活に寄与することを目指して取り組んでいることを知りました。このような学生の真摯な夢を応援できるよう、私自身も邁進いたします。 ところで、私の祖父は、長く都留市で山野草を研究しておりました。キャンパスのあちこちで出合う山野草に祖父の思い出を重ねつつ、奉職の喜びをかみしめています。 学校教育学科に着任いたしました小田郁予と申します。どうぞよろしくお願いいたします。専門は教育学で、「学校」という場の日常を描くエスノグラフィという研究をしています。学校へフィールドワークに出かけて、終日、現場で子どもたちや先生方と生活を共にしながら、「学校」という場で、どうその日常が維持されているのか、そこで生きる人々の生活を描く研究をしています。 いま「学校」、というとネガティブなことを様々耳にしますが、私の研究では、エスノグラフィの記述を通して、学校という場で生きる多様な立場の多様な人たちが、日々の難しさをどう語り、目の前にあるものの複雑さと共にどうあるのか、当事者にとっての「意味」を探りながら未来の可能性を探究しています。フィールドに身を浸し、そこに生きる人々の日々の営みを観察して、色々な語りに耳を傾け、現場の難しさを解きほぐしていく研究をしています。 学生のみなさんと共に学問を通して見識を広げながら、同時に対象に根を下ろし、現場から問いを立ち上げ探究を続けていけたらと思います。現場に生きる人にとっての意味、当事者にとっての価値を考えながら、「学校」という場で生きる人々の生きづらさを解きほぐしていく学びをみなさんと共にしていけたらと思います。どうぞよろしくお願い致します。先生方や子どもたちとの生活の様々な場面を綴ったフィールドダイアリーと、先生方の語りを聴いてきたICレコーダー。山梨県における基調講演学校教育学科 准教授小田 郁予学校教育学科 講師佐藤 みのり着任のごあいさつごあいさつ文大に着任するにあたって15都留文科大学報 第158号

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