学報158号
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教養学部 学校教育学科 新入生代表 清水愛実 暖かな春の陽射しに誘われて、桜もほころび始めるこの佳き日に、伝統ある都留文科大学の入学式を迎えられたことを、大変嬉しく思います。これも、母校の先生方・家族・友人たちなど、多くの方々の支えのおかげです。皆さんの思いをしっかりと心に留め、四年間の大学生活を実り多く、掛け替えのないものにすべく、日々精進したいと思います。 近年、急速なICTやSNSの発達により、コミュニケーションの方法も多様化して、幅広い交友関係が築け、それぞれが気軽に情報を発信・収集できるようになるなど、日常生活がより便利で効率的になりました。 一方で、現代社会では、人と人とのつながりが薄れているとも言われています。スマホを介した交流は確かに簡単で便利ですが、かえって人と人とが直接語り合い、考えや意見を交わす機会を減らしているのかもしれません。自分の考えだけを主張しがちになり、相手を尊重する姿勢も揺らいでいるように感じられます。加えて、新型コロナによる活動制限も影響しました。リモート授業や分散登校など、寂しい学校生活を経験したからこそ、人と人とのつながりの大切さを再認識させられ、改めて実際の会話や実体験によって人間関係を築くことの大切さを痛感しています。 同時に、ICTの発達は、戦争や貧困、災害の悲惨さなど、世界中の「今」をより身近に感じさせてくれるようにもなりました。世界人権宣言には、「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利について平等である」と明記されています。しかし、この理念を率先して実践すべきいくつかの大国が、世界中の国々を不安の渦に巻き込んでもいます。昨年、日本被団協がノーベル平和賞を受賞しましたが、私達こそ平和を築く力となり、次世代に受け継いでいかなければなりません。一日でも早く世界中の子供たちが武器ではなく、ペンとノートを持って勉強できるようになることを願っています。 私達はVUCAと呼ばれる予測困難な時代を生きていくことになります。グローバル化が進む一方で、少子高齢化や地方の過疎化、経済格差など、数々の問題が山積しています。その中で、私達一人一人が未来の創り手となるために必要な力を身につけていかなければなりません。やがて、多くの人が教育現場に進むことと思いますが、そこで巡り会う子どもたちが新しい時代の担い手となれるよう、社会に貢献していきたいと思います。 そのために、全国各地の学生が交流し、学び合うことができる恵まれた環境を生かし、意欲的に学ぶとともに、未来を見据えた高い志を抱いて、一日一日を大切に過ごしていくことを決意し、新入生のことばといたします。教養学部 比較文化学科 新入生代表 小林ゆい 季節は春を迎え、新たな生命が芽吹きつつあるこの佳き日に、伝統ある都留文科大学の入学式を迎えることができ、大変光栄に思います。これも母校の先生方や家族・友人たちの支え、地域の方々からの温かい眼差しがあってこそだと思います。大学での生活を、実りある素晴らしいものにすべく、切磋琢磨していきたいと思います。 あの地下鉄サリン事件から30年が経ちました。14人が犠牲となり、6300人が巻き込まれたこの事件は、いつもどおり学校や仕事に向かう人たちが被害に遭うという、日本社会を震撼させるものでした。若者の不安を煽り、間違った道へと引き込むやり方は、現代社会に蔓延る不安を考えると他人事ではありません。今、日本には少子高齢化や経済格差など問題が山積しています。その中で先を見通せない不安に駆られることもあるかもしれません。 一方で、現在も戦争が続くウクライナや中東では、教育の機会を奪われ、命の危険に晒されている若者が大勢います。本来であれば、学び、夢を追いかける人々が、未来を閉ざされています。日本に住む私たちは、戦後長い間平和を享受し、紛争やテロを遠い世界のことだと感じてきました。しかし、戦争による犠牲者は増え続け、ニュースで目にする街の破壊や人々の悲しみは、本当は決して遠い出来事ではありません。そうした世界情勢を考えると、高度な教育を受けることができる私たちは、非常に恵まれています。 今、私たちが生きる時代は、これまでにない国際的な変動の中にあります。紛争や政治的対立、貿易摩擦など、世界中にその影響が及んでいます。だからこそ、私たちは、他の国々や文化・価値観と向き合いながら、共に解決策を見出していかなければならない時代に生きています。そこで私たちが学ぶべきことは、単に知識だけにとどまらず、他者とのつながりを大切にし、社会に貢献する力を育むことでもあります。異なる背景や意見を尊重し、対話を通じて共に解決策を見出す姿勢が、これからの時代に求められています。 そのために、都留文科大学の恵まれた環境で、教養と多角的な視点を身に付けたいと思います。そして、世界を支える力強い存在となることを目指し、大きく成長していくことを決意して、新入生の言葉といたします。新入生のことば5都留文科大学報 第158号

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