学報158号
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「学ぶ」へとつなぐ経験ができるかもしれません。 1階にはセミナールームがあります。ここは、演習や授業、ゼミナール、市民公開講座や40人規模の上映会などに活用できます。 建物の中央には、資料室とライブラリ(図書コーナー)を設置しました。資料室には、全国の大学に先駆けて「都留市全体を『自然博物館』にしよう」という構想を描いた本学の元学長の大田堯先生(1918-2018)や同時期に「フィールド・ミュージアム」構想を提唱された今泉吉晴先生(本学名誉教授)に関係した資料、野外へ誘う図鑑や絵本などを収めます。 この資料室とライブラリの隣には地域交流研究室があります。地域での学びや活動の成果をニュースレターなどの発行物や展示として表現し発信します。 さらには誰もが活用できるよう資料室では、資料の研究やデジタル・アーカイブにも取り組みます。重要な衣・食・住の領域 都留文科大学の「文科」が意味する「人文科学研究」において、衣・食・住は欠かすことのできない重要な領域となります。本学の地域交流研究センターが推進してきた「つるフィールド・ミュージアム」構想においても、私たちの暮らしの根幹をなす家庭科の領域が、地域の食育など大切な課題に取組んできました。新校舎の2階には、こうした家庭科に関連した調理室、実験室、被服室などが配置されています。 最新のIH調理機器を備えた衛生的かつ安全な調理室では、栄養や食材の特性をふまえた調理操作を段階的に学び、食への理解と生活に活かす実践力を養います。 衣・食・住にかんする複合的な生活課題を扱うのが実験室です。ここでは理論と実践を統合し、多面的な視点から暮らしを科学的に探究する力を身につけます。被服室は開放的な実習室になっており、衣服の構成や造形技術、素材の特性と扱いを探究的に学び、創造性や自己表現力にかんする課題に対応する力を育てます。 暮らしに根ざした衣・食・住から、社会・文化・科学を探究していくこのような家庭科のビジョンは、身近にある学びから教育・地域・未来に開いていく目を養うことへとつながっていくでしょう。「新しい生きた社会の創造」に向けて 大田堯元学長は、「都留自然博物館」を「人間と自然との共存の関係を含んだひとつの新しい生きた社会の創造である」(*)と記しています。いのちある人間と人間、人間と自然がかかわり合い支え合う世界に向けて、新校舎がまさにその「拠点」となれるようともに育んでいっていただけたら幸いです。*『大田堯自撰集成 補巻 地域の中で教育を問う〈新版〉』地域交流研究センター北垣 憲仁ミュージアム」が完成しました7都留文科大学報 第158号
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